2024-06-27
おかえり、上野さんを囲んで交流会

2024年6月22日(土)ドネ会にて   

◆ごはん処おかえり 上野さんのお話

ごはん処おかえりの上野さんから、子どもたちの現状や、取り組んでおられることについてお話をうかがいました。上野さんが骨折されていったんはキャンセルやむなしでしたが、やっぱり行っていいですか?と連絡いただいて、松葉づえで来て下さいました。ありがとうございました!!
お話で上野さんのお人柄、魅力に触れて、ドネで応援させていただけたこと、出会えたこと、あらためて本当によかったと思いました。このご縁に感謝です。
以下、お話の要旨まとめです。
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■おかえりを初めて5年になります。
子どもたちの現状については、新聞・ニュースなどで報道されているようなネグレクト・虐待の一歩手前の状態の子どもたちが、おかえりにも実際に来ています。
おかえりは「縦割りを作りたくない」という思いを軸に活動してきました。
そのため、公的資金は一切入れていません。
その背景には何があるかといいますと、話は約12年前にさかのぼります。

当時私自身が7年間うつだった頃のことです。
自分自身が苦しくてSOSを出したり助けを求めることもなかなかできませんでした。
それでも勇気を出して、役所などいろんなところに助けを求めました。
当時、家族からの言葉の暴力も感じていました。
言葉は一度刺さると、抜けるものではありません。
そうした苦しみを役所などの窓口で担当の方に話しても話しても、なかなか伝わらない。
伝わるどころか、途中でフラッシュバックしてくるので発作を起こし、そのまま救急車で搬送されることもありました。
そんなことから行政に対する不信感があったのです。
でもその後ある時から、行政の方々の中にも痛みを分かってくれる人もおられることに気づきました。
そしてやはり行政には行政にしかできない役割がたくさんあるのだと思い、それからはあまりフェイスブックなどでも攻撃しなくなりました(笑)。

役所も社会福祉協議会も役割を果たそうとしているのだけれども、でもその網の目からこぼれ落ちる子どもたちや、網にかからない家庭がたくさんあり、そうした子どもたちがおかえりにやってくるのが現状です。
そしておかえりがその子たち・その家庭の受け皿でよかったなと、そう思っています。
おかえりの利用者数は年間1万5千人を越えていいますし、子どもの数も月にのべ千数百人に上ります。
その子たちのことを思うと、敵を作るのではなく補完していくなかで共に支えていけたらと思うようにもなりました。

■2年程前から、テレビ7本週刊誌1本と、おかえりを紹介してもらえるようになりました。
おかえりの存在を知る人たちが増えるにつれて、地域の方や企業さんなどから食材の提供をいただくことが増えました。
またボランティアとしておかえりを助けて下さる方々ともつながることができました。
こうした人のつながりの大切さ凄さを私自身が実感していますし、私一人ではとてもおかえりはやってこれなかったのです。
おかえりを始めた翌年に新型コロナ禍でおかえりも苦境に立たされましたが、そこで初めてテレビで紹介していただきました。
そのおかげでおかえりの活動を続けてこられたし、その後も大変な状態になるたびにマスコミが力を貸してくれて、今に至っています。

その度ちゃんとみんなが見てくれているんだなと感じると同時に、だんだんと怖くなってくることもありました。
それはフェイスブックなどでアンチの意見やお言葉を受けることや、深夜の電話などでもありました。
私はライン通話などは断ることなくすべて受けるようにしているので、明け方までやり取りが続いたりと、大変なことも多くありました。
そんななかで話すことで分かり合えたり、伝えることの大切さも感じる機会もありました。
言葉として伝えること、文字で情報発信していくことの大切さを実感しました。
フェイスブックでおかえりの日常を晒しながらも人とのつながりも伝えていくことで、「自分も電話してもいいのかなぁ」と思ってもらえる、「自分も行ってもいいのかな」と思ってもらえること、それを大事にしてきましたし、これからもそうしていくつもりです。

■先ほど「縦割りを作りたくない」といいましたが…。
豊中に「認定子どもの居場所」という制度があります。
おかえりもそれを取りにいこうかと考えています。
そのメリットは行政が持っている子どもの情報、つまり要対協(要保護児童対策地域協議会)が持っているのと同じレベルの情報がもらえることです。
児童相談所と市とやり取りしていくなかで、「親と子」「学校と子」「児童相談所と子」という情報がダイレクトに伝わってくるのです。
そこで今度はおかえりがその間に立って子どもやお母ちゃんの気持ちを汲んで調整していくこともできると考えています。

■今回骨折してしまって、私自身は活動できずにいるのですが、気になって仕方のないご家庭があります。
それは、新型コロナ禍のときに知り合ったお母さんなのですが、だんなが外国人で酒乱でアル中でどうしようもない状態になっていました。
だんなは、もとは有名な音楽家だったらしいが、コロナで仕事もなくなり酒浸りでDVもあり、お母さんはガリガリに痩せ細ってしまっていました。
ショックからか吃音も酷くてコミュニケーションもままならずで、それでも子どもを守りために実家に子どもを避難させていたのです。
その子がようやく戻ってくることになったのですが、まだまだ気がかりなので見守りが必要な状態です。
私も一日も早く復活して、その子たちをなんとかしたいのですが足は言うことをきかないので、気持ちばかり焦っているところです。

あと私の骨折の影響で、マスコミも取材を延期して待ってくれているところがあります。
読売テレビのニュース10と、テレビ朝日のおかえりと、日本財団のショートムービーが私の骨折の回復を待ってくれています。
ありがたいことに、こうしておかえりの活動を紹介してもらえるほどに支援してくださる方々も増えてきて、おかえりサポーターの数も360人を超えて、北海道から沖縄までの多くの支援者さんに支えて頂いています。
また近所のおばあちゃんが旬の野菜を自分でぬか漬けにしておかえりに持ってきてくれて「食べてくれる人がいたら嬉しい」と言ってくれるのです。
全国の、またご近所さんのそうした気持ちが本当にありがたく、おかえりを通じて私自身が、人を思う気持ちの大切さを実感し、学ばせてもらっています。

■こども縁日も5回目を迎え、今年は過去最高の600名を超える方々がご参加下さいました。
来年はさらに広い会場を考えなければならないような状況です。
こども縁日は「子どもは全部無料!」を貫いてきました。
町内の人の中には「50円くらい取ってもいいのでは…」という人もいますが、そうではないのです。
年収500万円でも生活が大変な世帯もあり、貧困層が広がっているのを感じている。

見た目には普通の子どもでも、生活の厳しさから子どもにお小遣いをあげられない家庭も結構あるのです。
そうした現状のなかで、子どもが親に気を遣って行けない祭りなど、祭りではないと私は思っているので、
「子どもは全部無料!」を貫いてきました。
その分参加くださる企業さんには負担をお願いすることになるのですが(最低500人分の用意をお願いしています)、それでもありがたいことに今年も13団体が協賛してご参加下さいました。
おかげで今年のこども縁日も、どの子も笑顔で帰って行くことができました。
何でも値上げ値上げの世の中だけれども、だからこそ「100円ちょうだいね」などとは言えない。
そんなことをするくらいなら、おかえりをたためばいいと思っています。

公的資金を投入すると、どうしても縦割りになってしまいますし、必ず縛りが出てしまいます。
「高齢者は大丈夫だけれど、中高年はダメ」とか…。
誰かを見捨てるくらいなら、誰かを切り捨てるくらいなら、やる必要はないとおもっているので、そのときはいさぎよくやめるつもりです。

■質問を受けて

Q:最初のマスコミの取材のときの、きっかけは何でしたか?
A:どこの新聞もテレビも、「フェイスブック見たのですけれど」と言って、フェイスブックを辿ってこられました。なので、文字にして思いを発信することはとても大事だと感じています。
若い人たちにも「誰が見てくれるかは分からないけれど、文字にして残す、発信することを大事にしなさい」と伝えています。

Q:以前に「妄想劇場」という言葉を見たのですが…。
A:過去にこの「妄想劇場」で実現している例がたくさんあります。
そのひとつは、山形の限界集落に支援者さんがおられて、空き家や畑を使わせてもらえたのです。
おかえりに来ていた女の子で親からの虐待でしょっちゅう家出をする子など数人を連れて行き、夏休みの数週間フリースクール「夢の学校」というのを実施しました。
山の中でネットもつながらないので夜は星を見て過ごし、コンビニにも行けない環境のなか、自分たちで自炊する経験を積み重ねていました。
そして家に帰るころには、自分でご飯を炊き、ウインナーや卵焼きくたいなら自分でできる力をつけていました。この経験でその子たちは自分自身に自信を持つことができました。

また別の「妄想劇場」の例では、おかえりのオープン当初に「まぜこぜ食堂」というのがありました。
これは毎週土曜日に「大人300円、子ども0円」というこども食堂のようなことをしていたのですが、
これも「妄想劇場」の産物でした。
「妄想劇場」として構想が上がってきた時点で、どれも6割方見通しが付いているのですね。
見通しを付けないと構想を書けないし、ただの妄想になってしまうので。
それだけ裏で構想を積み上げているので、文字にしてフェイスブックに書けるし、書かれた「妄想劇場」を見て、「それなら私はここの部分を手伝えるよ」「こんなのがうちにあるよ」などと協力を申し出て下さる方も出てくるのです。
でも最初は単なる妄想なんですねどね(笑)

今進行中の妄想は、どこかに一軒家を借りて、支えないかん子どもたちの居場所を作ることです。
今は一日に30~40人の子どもたちがおかえりに来るのだけれど、その中でも特にしっかりと支援が必要な子どもには、別口でじっくりと個別に関われる場所が必要なのです。

Q:おかえりのキッチンは上野さん一人でやっておられるのですか?
A:基本的には私一人ですが、手伝って下さるボランティアさんもおられます。
コロッケなどの揚げ物が出来ればそれでOKなのですが、案外とコロッケを揚げれない方が多いのですよ(笑)

Q:自分で工夫して調理することに不慣れな子どもも多いのでは?
A:レトルト食品や乾麺程度しか使えない子がほとんどですが、それではすぐに飽きるので、一工夫してリメイクする技を教えるようにしています。
今は炊飯器を使って簡単にできるレシピも多いので便利ですね。
防災用の備蓄ごはんなど、あまり美味しくないのですが、チャーハンにするなど工夫して美味しく食べれられることを実際に体験させます。
タコ焼き器を使っておやつを焼いたりとかの工夫も。
高学年の子は、下の子の面倒を見なければならない、いわゆるヤングケアラーも多いのです。
毎日スーパーでお惣菜を買えるほど裕福ではない家庭も多いので、自分たちで工夫して自炊し、生き抜く力をつけて、たくましく生きてほしいと願っています。

Q:「別口でじっくりと個別に関われるようにしたい」という言葉がありましたが、自分のことを見てくれている大人がいると、そう感じられるだけで子どもには本当に大きな力になると思います。
A:そうですね。そして、そういう関わりのできる大人を増やしたいのです。
私の目だけだと、その子のいいところを埋もれさせてしまっているかもしれません。
多くの大人が関わってあげることで、掘り起こしてあげることができるかも知れないのです。
だから地域のじいちゃん・ばあちゃんにも、そこに居てくれるだけでありがたいと、いつもそう言っています。
じいちゃん・ばあちゃんも役に立てたら嬉しいと言ってくれるので、ありがたいことです。
物がたくさんある世の中でも、一番抜けているのは人とのやり取りだったり、気持ちの交わし合いだったりしますが、そうしたことを大事にしていきたいのです。
防犯カメラを増やすよりも地域の人たちが立ち話している方が、よっぽど悪さの抑止力になるし、見守りになります。
実際、いつも子どもを怒っているおっちゃんが、子どもが怪我して大変なときなどに駆けつけてくれて、その子を抱えて病院に連れて行ってくれたりするのですね。
そういう昭和に戻ったような泥臭い関わりが大事だと思っていますし、そういう大人が居てほしいですね。
子どもたちのために。
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(交流掲示板の感想から)
▼上野さんのお話し、ドネ運営の参考になるところもあって有意義な時間でした。
上野さんご自身の病気や家庭のご事情までお聞かせくださり、公的支援を巻き込んでの活動、お人柄ゆえにここまでの広がりを続けてこられたのだと、ご苦労の多さにも頭が下がります。上野さんの骨折、少しゆっくりお休みいただける時間になればと願いながらも、早い回復をお祈りしています。

▼上野さんのお話をお聞きして
上野さんの行動力のすごさに圧倒され、上野さんの人生とお人柄で何より上野さんが一番大事にされている子供たちや親御さんへのお気持ちが心に響きました。
私たちも地域で何か?と模索中であちこち話を聞きに行ったりしたものの何かピンと響くものがなく
上野さんがおっしゃっていたように、食べたら終わり、渡して終わり。というような形だけのお手伝いだけでなく、その先の繋がりがあるといいな。と思っていました。
・・地域の現場に行っていようと思う・・
とは言え、自分から声をあげないあげれない人たちは必ず居るはずです。
地元に人脈も何もないので、まずは行動してみて、そこで何かのニーズを知ったり何かの出会いがあるかもしれないので、そうしながら自分達にできることをしていきたいと思っているところです。・・
上野さん、リハビリ無理されそうだけど
ゆっくり休んでいただきながら回復されることを祈ります!

▼上野さん、自然体で素敵な方でしたね。
また良いご縁ができて、良かったと思います。


※上野さんとの交流会は
尼崎のお店「千のまほろば」をお借りしました。
美味しいお料理とおもてなしで迎えてくださった
千のまほろばのKさん、スペシャルサンクスです!
ありがとうございました!
千のまほろば
https://sennomahoroba.exblog.jp/27769561/



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